今日は、東京大学理学系研究科(生物情報)修士課程2年の齊藤さんによる「システム生物学の勃興」でした。
前回に引き続き、理系の研究の発表が続きました。
「生物学」というと、大腸菌を培養したり、マウスに薬を与えたり、というイメージでした。
そして、それらの実験は、例えば「○○という遺伝子がないマウスは、太りやすい」だったり、「△△という物質が働くと、ガンになる」という、「これがあるからこの結果がある」という文章で表せる結論を導く研究でした。
原因と結果が、一対一で対応している現象です。
その研究の根底にあるのは、生物をパーツごとに分解して、そのパーツごとに詳しく研究をして原理が分かれば、それが生物を理解することになる、という考え方でした。
しかし、生物は単にパーツを組み合わせただけでは説明できない現象である、ということが近年言われるようになりました、
生物では、1+1=2、ではなく、1+1=0.5であったり4であったりしてしまうのです。
そこで、生物をパーツに分解して研究するのではなく、パーツを組み合わせた集合体としてとらえて、パーツ同士の相互作用を含めて研究することで生物を理解しようとする学問が「システム生物学」です。
例えば、大腸菌が栄養のある場所に向かうことができるのは、栄養の刺激に反応して前に進む部分と、その刺激の時間経過を記憶して動きをかえる部分との相互作用のおかげです。
個々のパーツだけを見て、「これはこういう物質があると動く場所」「これはこういう刺激が続くと動きを変える場所」という理解だけでは、「大腸菌が栄養のある場所にとどまる」という結論は導けなかったでしょう。
これまでは、個々のパーツにフォーカスした研究が多かったと思います。
そちらの方が、研究プロセスが確立され、きっちりと検証でき、一つの公式に落とし込むことができるからです。
生物学は、かなり曖昧な部分も多く、経験則から結論を出してしまっている部分も多いとのことで、これまでパーツを研究していた人から見ると信頼性が低い、と感じるかもしれません。
しかし、システムという、一つ次元を上げた視点からも研究をすることで、より役に立つ結果が得られるかもしれません。
パーツをじっくり解明することも大切。それをうまく組み合わせることも大切。
それぞれの分野がお互いに対等に、信頼し合って、先へ進めるといいなと思いました。